イヤホンヘッドホンの「バランス」「アンバランス」「アンバランス(GND分離)」とは?<2023年版>
ソニー初のバランス対応製品群(ヘッドホン、ポタアン)が発売されたのが、2014年。
当時は、「バランス」普及のために、「セミナー」的なことを、当たり前のように店頭でもやってたものだ。
>2015年当店ブログ「ヘッドホンのバランス駆動」とは?<2015年版>
↑当時のこのブログは、今でもアクセスが多く、まだまだ、バランスへの理解は十分ではないような気がする。
また、すっかり普及した感のある、バランス接続専用の「4.4mm5極プラグ」は、このブログ公開時には存在しておらず、解説できていない。
ということで、大幅に、加筆再編集を加えて、<2023年版>を書いてみた。
表記について
正確に理解するには、まず最初に、表記についても理解しておきたい。
アンバランス
なにかバランスが崩れているというわけではなく、バランスの対義語としてこの表現。業務用では、平衡(バランス)←→不平衡(アンバランス)と表現することもある。また、「シングルエンド」と言うこともあるが、ソニーでは、アンバランスという表現に統一されているので、当店もそれにならって、「アンバランス」と表現する。
「接続」「駆動」「出力」
バランス関連では、ちょっとぐぐるだけでも、この3つのワードが、登場する。「接続」は、物理的は配線方法のこと。「駆動」と「出力」は同じ意味で、流れる信号を指す。ソニーさんが、「出力」を使っているので、当店でもそれにならう。
ちなみに、バランス出力するには、バランス接続であることが必須。が、バランス接続していても、中の信号は、アンバランス出力でもOK。ちょっとややこしーねー。「アンバランス(GND分離)」っていうのがあるせいなんだけども。以下、詳しく解説していこー。
接続方法の違い
・アンバランス接続
↑左右合計して3本の配線。左右それぞれ+信号は独立し、-信号は左右共通となっているのが特徴。いわゆる、ステミニといわれるやつ。3.5mm3極プラグ&ジャックを使って、ステレオ音声を接続するための、業界標準だ。パソコン、スマホ、iPhone、Android、、、ステレオ製品には、なにからなにまで、すべてといっていいほど、採用されてるやつ。ちなみに、3.5mm3極プラグ&ジャックは、我らがソニーが開発し、JEITAへ働きかけ、規格化したのだ!
・アンバランス(GND分離)接続、バランス接続。実は、同じなのだ。
↑左右合わせて、4本の配線。+信号、-信号ともに独立している。スピーカーと同じ配線だね。アンバランス出力の3本に対して、1本配線が多いため、当然、ケーブルは太くなり、アンプの機構も少し複雑になる。
アンバランス(GND分離)接続、バランス接続ともの、この接続方法で、全く同じなのだ。中を流れる信号形式が異なるのだ。間違いのないよう、使用するプラグ&ジャックは異なる。
出力方法(信号)の違い
アンバランス出力
↑世界中に普及している、アンバランス出力。実は、左右の-信号が共通化されることで、右の音が左へ、左の音が右へ、漏れるという、「クロストーク」が起きる。音質面では、非常に不利なのだ。しかし、3本配線のため、よりシンプルな構造となるという、大きなメリットがある。
アンバランス(GND分離)出力
↑アンバランス出力の改善版というか、本来はこれが自然なわけだよね。左右は信号的にも完全に分離されており、クロストークは低減される。アンバランス出力に比べて、「セパレーション」がよくなる。なんていう表現をされることが多い。左右の音が混ざらず、分離感がいいってことだね。混ざらないから透明感や解像感もある。
バランス出力
↑アンバランス(GND分離)出力と同じ接続なので、左右のセパレーションがイイのはもちろんだ。
アンバランス出力、アンバランス(GND分離)出力ともに、左と右にそれぞれ1個ずつ合計2個のアンプが使われる。が、バランス出力では、左+、左-、右+、右-と、合計4個のアンプが使われるのだ。単純にパワーが2倍になる。当然構造は複雑になり、コストもかさむ。
接続端子(プラグ、ジャック)の違い
上:アンバランス出力(3.5mm3極)
中:アンバランス(GND分離)出力(3.5mm4極)
下:バランス出力(4.4mm5極)
3つのうち、アンバランス(GND分離)出力のみ、規格化されていない。
マイク付きヘッドセットと同じプラグだったりして、ピンアサインがメーカーによって異なることもあり、音がでない。といったトラブルが起きやすい。認知度が低く、ニッチなものとなっている。
一方、バランス出力機器よりは、アンプ数が少ない分、シンプルな構造にできるメリットはある。さらに、ソニーの場合は、アンバランス(GND分離)出力用ジャックに、アンバランス用プラグ(3.5mm3極)を挿しても問題なく音がなるという、互換性が保持されていることも大きい。
ウォークマンNW-ZX2や、現行のNW-WM1ZM2/WM1AM2などなど、アンバランス(GND分離)出力端子を搭載しているものもある。もちろん、互換性があるため、フツーのイヤホン(アンバランス 3.5mm3極)も使える。反面、有線ヘッドセット(マイク)は使えないということになる。
アンバランス(GND分離)のピンアサインは、メーカーによって違う場合あり。ソニーの場合は↑このとおり
↑4.4mm5極プラグ。ピンアサインは規格化されている。
「バランス」「アンバランス」「アンバランス(GND分離)」の音質は?
バランス出力のメリット
大きく分けて2つ。
1.左右の音が互いに漏れることがなく、クリアで立体感が出る。
アンバランス出力は、↑で解説したとおり、左右の音が互いに「漏れている」。クロストークがあるのだ。左右の音が、混信してて、気持ちイイ音には聞こえないよねぇ。
バランス出力の場合は、これが、根本的に改善されるため、本来のステレオ感が得られる。アンバランス出力と比較すると、ヒジョーに透明ですっきりとした音に聞こえちゃうのだっ!これを、「クロストークの低減」という。
2.キレがあり、キメの細かい表現が可能。
アンバランス出力、アンバランス(GND分離)出力ともに、2つのアンプで、音を鳴らしてるが、バランス出力の場合は、左右それぞれの、プラスとマイナスに、1つずつ、、、合計4つのアンプで駆動している。なんか、それだけでもすごそうなのがわかるかと。2つエンジン載せるより、どう考えても4つのエンジンのほうがパワフルなのだ。バランス出力にすると、音がキレッキレ。出るときはサッと出て、ひっこむときはサッと引っ込む。音がだらだらしないから、結果、それが、正確できめ細かい音につながってるのだ。
左:アンバランスのイメージ・・・力強さに欠け、ピンボケ感がある
右:バランスのイメージ・・・マッチョのような力強さながら、隅々まで細やかな描写感がある
(8年前の当時のブログから抜粋でスマン)
これを、「スルーレートの向上」という。この横文字からはちょっと意味合いを想像しにくいけど。この音を出せっ!としたときに、どれくらいの反応速度で音を出せるか?それがスルーレート。パワーが必要な音出しを、さっと素早くこなすには、やっぱりマッチョじゃないとね。
まとめると・・・
バランス出力は、混じりっけがない透明感、立体感が得られ、力強く、かつ、細やかな音が再生される。
で、、、当店店頭のお客様を被験者としてご協力をいただいたところ。。。
ほぼどなたでも、バランスとアンバラの違いは、はっきりとおわかりいただけた。場合によっちゃぁ、CDとハイレゾの違い以上にわかりやすいというご意見もあったほど。
もちろん、左右の「+」「-」合計4つを接続できるようにし、さらにアンプを4つ用意するという、かなり大がかりな仕組みが必要にはなるが。一度聴くと、もうアンバランスには戻れないほどの、音質の差を感じる。この音質の差は、すべての音源に影響するということを忘れちゃいけない。音源が、AMラジオだろうが、FMだろうが、、、ハイレゾだろうがなんだろうが、、、元の音源を損なわず聴けるのが、バランス出力なのだ。
アンバランス(GND分離)出力のメリット
4つのアンプで駆動するバランス出力と、2つのアンプで駆動する「アンバランス(GND分離)出力」。接続方法は同じだから、クロストークが少ないという、バランス出力の2つの特長のうち、1つはそのまま同じなのだ。もちろん、プレーヤー側で、「-(マイナス端子)」を左右独立して、合計2つ用意する必要があるわけだが。やはり、左右の分離感があるのは、大きなメリットだ。
バランス出力ほどは、コストもかからないため、「有線マイク不要」の音楽専用プレーヤーは、アンバランス(GND分離)出力を積極的に採用していってもらいたいものだ。
まとめ
「バランス出力」「アンバランス出力」「アンバランス(GND分離)出力」の違いはおわかりいただけたと思う。
それぞれ、音質、コストなど、得手不得手があるわけで。音質がいいから、一概に、バランス出力がいいとは言えない。ウォークマンAシリーズなど、コンパクトなものには、とても、バランス出力は採用できない。当然、価格面でも。また、スマホの場合は、有線マイク(ヘッドセット)を使えなくするわけにはいかないから、「アンバランス(GND分離)出力」すら搭載は厳しい。NW-WM1シリーズや、NW-ZXシリーズといった、「音楽専用機」でありながら、「サイズや価格」でも余裕がある、上位モデルであれば、バランス出力対応は必須だろう。
最後になったが、「バランス出力」「アンバランス(GND分離)出力」を楽しむなら、当然、イヤホンヘッドホン選びも注意が必要。基本的に、「リケーブル」できるものであれば、OKだ。それぞれの必要なプラグに対応したリケーブルにすることで、楽しめる。
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